【児童文学】うわさのズッコケ株式会社
お正月も休まず仕事をしていますが、三が日の終わる午後ぐらいは、ゆったりと過ごそうと思い、児童文学を手にとって読んでいました。
昭和48年生まれの私が、小学生のころ、児童文学はとても大きな娯楽でした。生まれた町は千葉の田舎で牧歌的なところで、高度経済成長の日本から縮小社会へ入った今でも実家のある地域は、30年ぐらいたってもあまり風景が変わっていません。子供のころは、電車で千葉駅に出るのが都会でした。ちびまるこちゃんが、清水駅に行くような感じが近いかもしれません。自動車には[自家用]という文字がドアの下側に書かれていたりしました。(これは「自家用ステッカー」というものだと今検索してしりました。)庭で枯葉のたき火をしたり、ゴミを燃やしていました。電話はもちろん、黒電話でした。小学生が四キロもの道のりを一人歩いて帰る、というのも普通のことでした。
私の時代には、「ズッコケ三人組」というシリーズの本があって、「はちべえ、もーちゃん、はかせ」という3人が織りなす楽しい珍事件が展開される人気の児童文学があり、よく読んでいました。中学生になると途端にそういうものを読まなくなりました。世界観と興味が変わる時期が来るのでしょう。
そんな時代がずいぶん続くのですが、子供が生まれ育つことで、人生の二順目を体験しています。小学生の娘の授業参観に行ったらり、市民センターの小さな図書貸し出しサービスの場所に行ったりするようになりました。(八木山市民センターは、小さいながらもかなり、リッチな内容です。大判の美術書などが寄贈されていて借りて帰ることもできます。このあたりは、東北大工学部と橋でつながっていて、元教授とか、アカデミアの人も多いですから。その辺の影響を感じます。ちなみに、貸し出しはハンコで、美術書は、私が初めて借りたものが結構ありました。ひっそりと、何十年も、そこに佇んでいる高価な本が、沢山ありました。裏山にだれもいかない素敵な湖をみつけたようなきもちがしました。
さて、娘たちと年末におとずれて、思わず懐かしくて借りてしまったのが、首記の本です。”ズッコケ株式会社(作中では、HOYHOY商事)”を、小学生の主人公たちが創業・運営するというものです。
この本は、子供の時には読んだことがなかったのですが、なかなか勉強になる内容でした。事業の立ち上げ、収支計算、株式発行と配当、売りかけ金の回収、大量在庫の不良資産化、大繁盛に伴う現場運営のオペレーションの大変さ、人々の情熱、働くことの楽しさ、そして経済的な価値だけにとらわれない価値観の人物(流浪の画家が、話にスパイスを利かせています)などなど、多くのことが物語の展開を通じて自然と書かれています。
大人でも、収支計算や会計のことをきっちりやるのは大変ですが、この話の中には最小限のその構造が登場して、基本的知性をまなべます。また、商売に特有の商機の発見、リスクの出現、暗中の中を突き抜けていく精神的な創業者の強靭さ、協力的に運営され窮地を切り抜ける人間の織り成すドラマなど、スタートアップに必要なマインドセットを疑似体験することができます。
そして、料理の才能をもつサブキャラクターが腕を発揮して大盛況(そしてへとへと)になりながら、在庫をすべて生かすことができて、配当を払い、同級生の株主たちから株券を買い取り、株主総会での賛成を経て会社を解散させて物語は終わります。
現代のルールからいくと、保健所の検査もなしに、ラーメンを調理して販売する事が許されないとか、収益にかかる税金や証券の発行あたりが現実のルールの厳格さと違うかもしれないところや、現代だと、子供がビールを商店で大量に買うことができないだろう社会環境があります。ですが、これは、物事の大事と小事でいえば、この作品の幹とは違う、小事に当たります。
むしろ、私たちが(例えばですが)無人島に流れ着いて、そこでゼロから文明や経済を再構築していくとしたら、商売はこういう風に発生するのだ、その本質はこれだ、ということを理解する基本モデルが、この作品の幹であり”大事”であると思います。(補足:この本の中に、無人島が出てくるわけではありません)
生きる力を身につける。
それが若年層へのアントレプレナーシップ教育の本質だと私は思います。「品質や顧客のことなんてどうでもいいから、とにかく銭金をもうける」という思想のコンテンツなら批判を大人がするべきですが、「生きる力を身につける」タイプの「商売(事業機会の発見と、お金を稼ぐことの大変さをやり抜くこと)」は人生を生き抜くインテリジェンスとして、抜かすことのできない知力であることも、たしかです。児童文学だけでなく、大人向けにも増えてほしいなぁと思います。
この本は小学生が一人で読むには、やや数ページだけ苦しい所があります。会社の設立をするあたりで、”はかせ”がほかのメンバーに、株式会社化を提案し、株式の発行による資本金を創ろうとするあたりです。事業を自分でしている私が復習としてよむには、わかりやすい優しい書き方だなとおもったのですが、小学生がなにも知らずに読むときには、たぶん読み飛ばして、大人になって、ああこういう意味だったか、と驚くのだろうともいます。それも含めて作者 那須正幹さんの子供へのギフトなのだろうと思います。
子供が、イベントで「駄菓子屋さんをやってみたい」という時に、商売の計算をきちんとさせるときには、この本を題材にすると、伝わりやすくていいのではないかと思いました。
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ちなみに、私が借りた本は、発行1986年7月 第1刷、1989年 第15刷、とありました。当時の定価は906年(本体880円、税26円)。
貸し出し期限表をみると、平成2年(1990年)10月6日にスタートして、私は36人目の借り手のようです。私の直前に借りた人の返却予定日は、平成16年(2004年)でした。今、平成23年(2011年)で、この本はこの7年間、ずっとそこにあったようです。21年間も一冊の本が人々の手を渡ってきたというのも、すごいですね。その部分にもいろんなことを感じていました。
(ちなみに、まったく関係ない話ですが、大学生の一年生の時は、数学科にいたみとしては、数へのこだわりが少しありまして、今年、「2011」年というのは素数年なんです。そして平成で表記しても「23」は素数なのです。これは全くの余談ですが、新年早々のブログなので、今年は2011年、平成23年である、ということを自分に印象付けたくて、書きました。本には全く関係ありません)