顧客の顧客はだれなのか。
営業マンをしていたころに、繰り返し交渉や提案を経験しながら気づいたことがあります。それは顧客にものを提案する際に、商品の特徴・メリットを話してもそれは表層的なことでしかない、ということです。では何が本質的に営業マン必要な視点であったのか。たどり着いた重要な考え方のひとつに『顧客の顧客』という視点がありました。今日はその話を書きたいと思います。
ある生産装置を販売しようとして顧客のところへ行きます。彼らはなぜその機械をかうのか、それを本質まで突き詰めて考えると、次のようになります。彼らは事業を行い売上と利益を増大させることをしたい存在です。彼らの売上と利益を生み出すものは何か。それは、彼らの顧客です。彼らにとっての顧客が今よりたくさん、今より高くモノを買ってくれるようになること、これが本質的なものです。(話をシンプルにするために、ここでは、営業外収益(投資による収益など)は対象から外します。)
さて、その意味では、提案しようとしている生産設備は、最終的にめぐりめぐって、彼らの顧客を増やすことにどう役に立つのか。これが大切な視点になります。新しい生産設備をいれることで、より短い時間で個別の要求に合わせた商品を生産できる。たとえばそういうことです。彼らが欲しい装置は、一時間に30個の生産量が40個になることをかなえるもの、ではなくて、彼らのお客がもっと増えて、もっとよろこんで買ってくれる商品をつくれるという装置です。10個余計につくれることは本質的な購買理由にはならないのです。(注:ケースによります。一時間に10個余計に作れる機能が、即顧客のよろこぶことになるケースもあり、その場合には、上記の表現とはことなることになります。)
この視点でよく分析された提案書をうけとると顧客は心が動きやすいし、上司に購買の相談をしやすいわけです。彼らにしてみると、たずねてくる多くの営業マンが「うちの製品、買ってください!」なのに対して、「貴社のお客様をもっと喜ばせる商品を持ってきました!」という切り口の営業になります。この提案が言うほど楽ではありません。前者は自社の商品を良く知っているだけである程度のことができますが、後者はそれに加えて、顧客が何をしているのか、何へ向かっているのか、といったことを詳しく調べて本気でお客の立場にたって提案が考えられている必要がありますから。
ただ、この方法のほうが「あの営業マンは、来てもらうとこっちが勉強になるよ」と顧客に言わせることができ、その件以外にも、別の部署への紹介などを相談しても快く紹介してもらえることが増えます。(私自身は一度代表電話から飛び込みでお伺いして、そこで関係性を形成でできた顧客から、別の時期に別の商品を提案するために、該当する部署を紹介してもらったりしました。誰もが知っているある飲み物のメーカでの出来事です。(幸運にもその方(紹介してくれた顧客)も相当、力のある人でしたのでその案件はその後大きな可能性をつかむことになりました。)
ビジネスはその基本は営業である、と私は思っています。ベンチャーでも大企業でも顧客がいてこその、事業です。商品・サービスを提案する際に、どうしたら早い段階でお客さんの信頼を獲得し関係性を深めていけるのだろうか、とおもったら、以上のことを考えてみるのもいいかもしれません。最後に、それを「悩んだときの問いかけ文」スタイルでまとめておきたいと思います。
「私のお客のお客は誰だろうか。私の提案する商品は私のお客のお客を喜ばせるのにどう貢献するのか。」
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ちなみに
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自分の商品が、経理システムであり、自分の顧客はその企業の”経理部”だったときに、彼らの顧客はだれか。ちょっと頭をひねるかもしれません。このときには彼らの全社的な顧客をおもいうかべても経理部の購買心をくすぐるものにはなりにくいことが多いです。彼らは自社の顧客が増えることに直接的な興味がないということが往々にしてあるからです。
そのときに、彼らの顧客は彼らがサービスを提供している人たち、と考えることがヒントとなります。経理部はどこから給料をもらい、だれに何を提供しているのか。それは、組織体制によりますが、営業部隊であったり、経営管理組織に対してであったりします。彼らはその仕事の品質・速度によって評価をうけるならばその辺がさかのぼるべきつながりかもしれません。
そう考えると、コールセンターは?とか、研究管理部は?とか、さまざまな部署向けの商品を営業する際の視点が見えると思います。
(追記)上記は全てBtoBのケースを考えています。最終消費者むけの商売(BtoC)の場合はすこし趣が違うことは確かです。ただ自分の欲望のための消費もあれば、家族の健康を願って母親が買うような商品の消費もあります。後者であれば同じロジックで切り口が見つかります。