【アイデア】高齢者向けの知的遊戯として、オリジナルの卓上かくれんぼ
先日、ある高齢者施設の職長さんがアイデアトランプのワークショップに参加してくださり、その時にこうおっしゃいました。
「高齢者の頭を活性化させるようなゲーム道具ってできないだろうか?」と。
私はそれを聞いて、共想法(きょうそうほう:共に行う回想法)のことを思い出しました。
共想法:
東京大学の大武先生が展開されている高齢者向けの知的活動プログラム
以下の資料がわかりやすいです。
http://www.neuroscint.org/otake/uploads/papers/Otake_IRLRC2009JPpp104-110.pdf
私は確か・・・、どこかの学会発表か学会セミナーでお話を伺ったと記憶しています。
「共想法というものがありますが、そのようなプログラムのなかで生じている良い事をエッセンス、仮にゲーム道具を作るなら、面白いものができる可能性があるかな、と思います。」とお答えしました。
私が思ったのは、
例えば、当時の写真のスライドという良い手法を拡張して、その当時の衣服や生活道具(おひつ、とか、籠、とか)を、施設に用意しておいて、共想法において当時の服と道具で作業そのものをやって見せてもらうと、より手から脳へのフィードバックが増大し、かつ、他の参加者も共感性の高い応答ができる可能性があるのではないだろうか、と思いました。ただ難しさもあります。当時のものを用意して保管しておくのは、結構な購入費用もかかり、保有しておく空間も取ります。また、当時のものと同じものだと、腕力や脚力の問題で手に取ることができないかもしれない、あるいは、落としてけがをしたりするかもしれない、という可能性もあります。
そんなことを、記憶の奥底に入れていました。
ところが、最近になって、2つの事に出会い、もしかしたら、という可能性を感じました。
1つ目。ボードゲームです。
少し前に、高円寺のすごろくやさんに行きました。前から行きたかったところで、大量のボードゲームを販売しているところです。お店の忙しい時間帯なので恐縮しながら、でも、あれこれ質問させていただいて1万円ぐらいカードゲームを資料として購入しました。(すごく良いお店だったので、いきなり、アイデアトランプも、贈呈してきました。)
その中で買った本 に、面白いボードゲームの説明がありました。かくれんぼをするボードゲームです。「オオカミと七匹の子ヤギ」というものです。
内容を説明しされているビデオがありました。
※音が出ます
ルールを3行で言うと
- オオカミ役と子ヤギ役に分かれます。
- 洗い桶や古時計やベッドなど7つの隠れ場所の下に子ヤギは隠れます。※1
- オオカミは番が来たらそこに来て2つだけ隠れ場所をひっくり返せます。子ヤギがいたら獲得できます。見つからなかった子ヤギはその隠れ場所に石チップがありそれを獲得できます。洗い桶と古時計だけはすこしスペシャルな機能があり、そこに入るか、そこを開けるかで、戦略性が出てきます。※2
- 何度か繰り返して勝敗が決まります。子ヤギは石を7つ集められたら勝ちです。オオカミは子ヤギを全部捕まえられたら勝ちです。
※1:プレイヤーを入り込ませる、という行為はかくれんぼを卓上で再現していて面白いですね。
※2:バランスを崩すことで戦略ポイントを出現させるというのは面白いですね。
さて、次は2つ目。3Dプリンターです。
3Dプリンターの存在は前から知っていました。ブレスターの開発を支援してくださった宮城県産業技術総合センターにもかなり良い設備がありその力を目の当たりにしてこれはすごいなと思っていました。
アイデアワーク関係で一緒にお仕事をさせてもらった東京の原さん(ケイズデザインラボ)の会社に遊びに行かせてもらい、FreeFormを触らせてもらい、三次元データ入力を、手ごたえのある入力デバイスでできることにずいぶん感心しましたし、同社の仕事から、工業製品とアートの境目をつなぐというかもっと工業製品が有機的な感性をまとっていくような今後の社会のトレンドを見ていました。
それに加えて、先日のIAMAS小林茂先生とのトークイベントもあり、3Dプリンターがあったらやってみたいこと、をずいぶん考えていました。
さて、これらの2つを頭の中でつなげた時に、冒頭の問いに一つの形が思いうかびました。
1)昔の生活で使われていた日用品や箪笥の造形、着色データを沢山ストックする。
2)共想法の要領で、高齢者の方に若かりし頃の風景や自分の写真を用意してもらう。
3)3Dプリンターでそこに写っている日曜品を出力する。
※3:たとえば、半ズボンにランニングシャツに虫取り網、などの基本データを組み合わせ、体格は当時の子供たちの標準的な体格を指定し、顔には少し伸びるタイプの樹脂に印刷した当時の顔写真を張り再現します。
これで道具としてはそろいました。二つほど、高齢者向けの知的活動を促進する道具案として考えてみました。
〇 遊び方案1
先ほどの「オオカミと7匹の子ヤギ」の要領で、遊びます。
『今日は、佐藤さんのおたくでかくれんぼをします。皆さん、自分の駒を動かして好きなところに隠れてください。』
(じゃあ、わしは、わしを、こたつの中に隠れさせるか)
という感じに遊びます。
例えば、出身地が秋田だったら「おおかみ → なまはげ」としてもいいかもしれません。当時のヒール(悪役)だった人物でもいいでしょう。アニメやプロレスや歌舞伎におけるヒールを、オオカミの代わりにします。
〇 遊び方案2
タンジブル共想法、とでも言う方法で遊びます。
共想法の要領でスライドを映しますが、その当時の自分の姿の駒を手で動かして、『ここで走り回ったんだ』とか、『この木に登って、ばあさんにずいぶん怒られたんだ、、、そうだ、これは、桃だ、桃の木だったんだ。折っちまってずいぶん叱られたっけ。』とか。
自分の昔を投影する「像」が実際にそこにあり、手で動かせる。
それはいろんな認知的な力を補助して、記憶の回想の補助になるかもしれません。
以上です。
これらは、ジャストアイデア(未成熟な段階の思いつきに過ぎないアイデア)です。実際にそれらがどれほどの効果を持つのかは、わかりません。また、実際にやるには、データ収集、写真からの同定、着色の手間、費用、など、課題がさまざまにあげられるでしょう。(ただ、それら課題に対して効果的なうち手を一つ一つ立てていけば、乗り越えることは、この時代の社会環境と技術システムがあれば可能でしょう。)
なので、職長さんの問いに対して、1つの未成熟な(そしてとてもコストのかかる)アイデアでしかないのですが、最近考えていたことを、フルに述べてみました。