熟達者の特徴
「企業内人材育成入門」のP55から引用します。
(引用ここから)
熟達者は初心者と比べてどのような特徴を持っているのだろうか。ここでは
①記憶力の向上、
②下位技能の自動化、
③問題の直感的把握、
などに分けて説明する。(中略)
①記憶力の向上は、文字通り、自分の土俵で覚えなければならないことをより高速に、確実に覚えられること。(中略)
②下位技能の自動化とは、熟達者は、ある課題を遂行する際に、特段に注意を払わなくても出来てしまう部分が多くなっていくという意味である。多くの技法が自動処理によって行われるから、処理がすばやくエラーも少ない。(中略)
③問題の直感的把握とは、熟達者は初心者に比べて、見るべきところを注視し、そこに認知的資源を傾けることができるということである。一般に熟練者は初心者に比べて、膨大な知識をもっている。
(引用ここまで)
この節は、人が「熟達すること」を論じているとても面白い節だとおもいました。とても興味深いですね、人はいかに育つか。そしてそのエッセンスは、これからの知的娯楽産業の要素が大きくなる現代社会ではとても貴重な産業資源。
そして心に留まった一言があります。
それは、「誰でもはじめは初学者だった」というフレーズです。熟達者と初心者を比較しているわけですが、その熟達者もかつては初心者だった。全てのベテランはかつては初心者。こう考えるといろんなことが発想できそうです。
なお、そこにつづく部分では「いわゆる熟達者になるためには、いったい何をすればよいのだろうか。」と続きます。
(引用ここから)
また、興味深いのが、「初学者は熟達者の仕事を観察しているだけでは一人前になれない」というものがある。なぜなら初学者は、熟達者の仕事の「どこに注目すればよいか」がわからないからである。ただ見ているだけでは、熟達者にはなれない。一人の人間が「熟達」し、その道のプロになるためには、それを外的に支援する仕組みが必要になる。
その最大の契機になるのは、先輩や上司などの有能な他者との共同作業であろう。認知科学者コリンズらによって主張された認知的徒弟制理論は、これに答えを出す。
認知的徒弟制とは、
①モデリング、
②コーチング、
③スキャフォルディング、
④フェイディング
という4つの支援のあり方を通じて、人を一人前にするモデルである。
まず①のモデリングでは、熟達者が模範を示し、学習者はそれを見て真似ることを行う。
②コーチングでは、熟達者が手取り足取り学習者を指導し、助言する。
③スキャフォルディングでは、自分で出来ることろは学習者に独力でやらせてみて、出来ないところだけを支援する。
そしてだんだんと支援を少なくしていき、学習者を自立に導くのが④フェイディングである。
(引用ここまで)
人にどう教えるか。とても深く重要なことですが、感覚的にやってしまっていることのなんと多いことか。効果的な人育てを心がけたいものです。