絞って、情熱をそそげ
ニッチに絞って、
圧倒的な情熱をもってものを提供すれば、
どんな壁にも穴はうがてる。
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私のいる業界はベンチャーや起業家がたくさんいる世界です。日々感じる一つの事実は上記の言葉です。
強い意志がある人には、それができる力があるし、
そういう役割をになった存在でもあります。
その仕事はこういう意味を持っています。
組織に風穴をあけ、 社会に新しいケモノ道を創る
しかし、リソースの少ないチーム(ベンチャーやプロジェクトチーム)がなぜそういうことが可能なのでしょう。
今日の社会は、アクセルとブレーキの両踏みをしている社会である、ということが大きな要因だと思います。
優秀な人をたくさん抱える大手組織においては、個々の力はたかく、総合的な組織力も発揮しています。しかし組織が一定のパフォーマンスを安定して出せるためには、組織メカニズムの水準をトップに合わせることはできません。平均値の人が達成できることを前提に組まれています。
F1カーもファミリーカーもいて、もっともおおいファミリーカーの性能で集団が走行したらF1カーはしょっちゅうエンストするでしょう。高性能がゆえに。加速してはブレーキを踏んで、時にはエンストしないように、エンジンの回転を高めたまま減速しないといけません。アクセルとブレーキの両踏みです。
かつてのように、平均値周辺の人材育成が盛んだった時代ではないので、みな、どこかが秀でてどこかは弱点があります。F1カーには、燃費が悪い、オフロードは苦手、という弱点があります。ほとんどが多様なF1カーがたくさんいる組織では、平均的にできることを規定すると、ファミリーカー集団よりのパフォーマンスを低く設定しないといけません。それでいて、いろんなタイプの車が、アクセルとブレーキの両踏みをします。これは個々は辛いし、組織パフォーマンスも低い辛い状態。
現在の社会には、そういう大きな組織がたくさんあると思います。
ベンチャーがある種の「組織に風穴を開けて風通しがよくなる」ことを実現できることは、そして、「社会に新しいけもの道をつくりそこに流れが生まれる」ことは、このテンションのたまった均衡を破壊して、一気に噴き出る心のマグマが、既存組織・既存社会にもたくさんあるからです。
まったく、そういうものがないところで、けもの道や風穴をあけても、小人数が行き来をするだけの仕組みをつくるに過ぎません。
壁に穴をあけることができる、という表現をするには、そこには「既存」の人々がたくさんいて、テンションのたまった空間があります。壁に穴をあけるのは決して簡単ではありません。しかし、たとえ数名であったとしても、やさしい陽光が虫眼鏡で発火温度まで高められるのと同じように、数名の力を、細く針のようなポイントに絞って集中投下すれば、必ず壁を溶かし穴を穿つことができます。小さな小さな穴。そこから少しずつですが、張りつめたテンションの吹き出しが起これば、あとはそのエネルギーがドライビングフォースになります。一転突破・全面展開、の言葉が示すとおり、小さな穴があけば、そこから全面展開は十分可能です。
(虫眼鏡の光を絞ることが大事です。発火点に達さない集光では、温めるエネルギーは冷える速度と均衡してしまい、1時間当てても発火することはありません。狭く狭く絞って、熱が臨界点を超えるまで絞る。そのことが大事だと思います。)