ブレインストーミングを快適にするコツ
実際にブレイン・ストーミング(アイデア出しの会議)を行うときには、一番重要なルールである「判断遅延」だけを意識するだけでも、かなり効果があります(「判断遅延」=批判禁止の原義)。判断遅延、は、批判禁止、とも表現されます。いずれにしても、ネガティブな判断はアイデア出しの作業が終わる時点まで、しないでおこう、と意識づける。それができれば、かなりブレストに近い状態になります。
なおアイデアを、紙かホワイトボードに残せるように、書記役をひとりきめてください。書記役の人は、できるだけ発言者の発言した通りに書きます。表現を丸めたり言い換えたりはしないでください。発言が長すぎて書きとめにくい場合は、発言者に言い換えてほしいといい、発言者に要約してもらいます。そしてその発言者の内容を書きとめるのがコツです。書記役が要約してしまうことは極力さけます。
20~30分のブレインストーミングでは、ホワイトボードはいっぱいになるので、アイデア会議にはホワイトボードが3面くらいあるとよいです。あるいは大きな模造紙と裏うつりしないマジックを用いるといいでしょう。今は、巨大なポストイット(イーゼルパッド)という道具も市販されています。書いてはがした紙を、壁に張っていけて便利です。
運営には、ある程度コツがあります。ご説明します。
ブレストをしていて一番おおい悩みは「批判がすぐに出てしまう」ことです。批判能力も創造能力の一部ですから、とても重要なのですが、拡げる段階には害(ブレーキ)。でも、人間は思いついたこと(それがたとえば批判事項であっても)を頭の中にためておくと、新しい考えが行いにくいものです。
4つのコツをご紹介します。
コツ1
どうしても批判したい人には、カードを渡しておいて、アイデアの心配なところ、まずい所は、そこに書いて、ポケットにしまっておこきます。紙に書いておくことで安心して忘れて、次のことを考えられるようになります。そもそも、アイデアは100出しても実行するのはほんの一握りまで、絞ります。90以上のアイデアは、批判力をそそいでも、無駄になります。会話の分だけ、会議時間も消費します。書いたカードの多くは、大量に廃棄になりますが、本来なら、その発言時間分だけ、全員が時間を廃棄したはずなので、とても有効です。
コツ2
批判を生産的なつぶやきに言い換えて、それもアイデアの材料にします。どうしても批判してしまう人がいます。悪気はありません。「批判しないで!」というのもそれはそれで場の空気が難しくなります。そこで、その発言さえも、逆に生産的なつぶやきに変えてみます。
「そんなの誰も欲しくないんじゃない」→「それはそうかもしれない、でも、もしごく稀に、それ欲しい!というマニアックな人がいたら、その人がもっと泣いて喜ぶような仕様ってなんだろう(突飛なアイデアのトリガーにする)」
「それ、確率論的に10回に1回ぐらいしかそうならないでしょ」→「そうだ、じゃあ、同時に20個起こせるやり方ないかな。それなら1個か2個は成功して終わるかも」
「それはコストがかかりすぎるよ」→「なるほど、じゃあ、そのアイデアを、コストが1/10でできるアイデアないかな」
このように、批判の言葉を、次々とそれも発想の引き出しとして使います。批判した人が、立場がなくなるような、いさめ方をするよりも、皆が気分よくブレストを進行できます。おもわず批判をしてしまった人も、居心地が悪くならずにすみます。
コツ3
whatとhowを分けてブレストをします。
最初の10分では、○○だったらいいのにな、という、理想の状態を発案していきます。そして、次の10分では、どうやってそれを実現するか、を発案していきます。20分の発案タイムの中を、このように構造化することで、「どうやって実現すればいいか分からないけれど、こうだったらいいのになぁ」というアイデアがすいすい出るようにします。あとからみんなの力を使って、実現方法をかんがえればいいわけですから。最初の10分で、面白い理想案について出し合う。このときに、批判が出ますが、「実現方法は、今は分からないでもいいよ」としておくことで、判断遅延の思考スタイルになります。
コツ4
なお、ブレストをどこまで脱線していいか、難しい所ですが、きつすぎず、しかし、ある程度の方向感を作る必要があります。ブレストのリーダの技量で変わるのは、ここもあります。方向を延々脱線しない簡単なコツは「アイデア出しの時間をさきに決める」ことです。20分間なら20分間、というように、アイデアを広げる作業の時間を区切ります。そうすることで、メンバーが、時間制限の中で躍動感ある発言を出し合えます。延々と脱線しても、20分時点で、雑談が強制打ち切りなること。こうすることで2時間の会議を大したアイデアも出ないまま雑談に終わってしまうことを防ぎます。
20分と決めなければ、ブレストが、だらだらとした雑談になり、1時間の会議予定時間の終わる数分前に、「大慌てで、アイデアを出し合う」ことが起こり、残りの発案は、各自宿題、持ち帰り、といったことになっています。これを避けます。
なお、これらの会議では、発想トリガーをテーブルに用意し使うのも、いいでしょう。
※こういうシーンで使える発想トリガーのブレスターの中に入っているTOIカード(50枚中、ゲーム用の2枚を除いた48枚)を設計しています。
あるいは、技術系のアイデア出しの会議なら、TRIZの技術的ブレークスルー40パターンを、簡単化した「智慧カード(英語版はIdea Pop-up Cards)」があります。
智慧カードの全カードセット