メンバーから確実に大量のアイデアを引き出す「ブレイン・ライティング」
西ドイツで開発された手法です。6人で30分間黙ったままアイデアを出し合い108個を生み出す、という手法です。寡黙な人からもたくさんのアイデアを引き出せます。
まず、ブレインストーミングという手法は、案にコミュニケーションスキルの高さを要求されています。間髪入れずアイデアを発言する(あるいは、場の雰囲気にのっとったように発言をする)には、スキルがいります。発言スキルの高い人はたくさん発言し、控えめな人は良いアイデアはあっても出せていません。ブレストと好対照なこの方法、説明します。
まず、ブレストのルールを説明して、それから、A3くらいの大きな紙を全員に配り、紙の上部にアイデア出しのテーマを書きます。
そして、3×6のマス目を紙面いっぱいに書きます。5分間で1行目のマスにアイデアを書きます。1ます1アイデア。時間が来たら、左隣りに回します。また書きます。5分たったら左隣りへ回して・・・を繰り返します。6人でやるので、6回やるとちょうど1周します。
初めの1行は、ただ、アイデアを黙ったまま書くだけなので、遊び心もなにもなく、アイデアをかきました。二行目は、右隣りの人が書いたアイデアが既にあります。それを展開して、こんなアイデアはどうかな、と発想の材料にできます。次の3行目には、さらにシートが変わって、1,2行目に書いていあるアイデアが飛び込んできます。一ぺんに6つも新しいアイデアを目にすると、読んでそのうち、アイデアが出てきます。最後の方になると、シートを回すと、かなり面白いアイデアが出ています。
ブレイン・ライティングは、ブレストのルールを実行しやすい特性があります。まず、判断遅延が、徹底できること。人は誰かのアイデアを聞くとすぐに、足りていないところが思いつき、ネガティブな判断をしてしまいます。そして、それを発言していまします(批判発言をしてしまう)。でも、書きものの場合、人のアイデアの批判はできません。批判するには、わざわざ書きこんで、こんなの無理!、とかくしかありませんが、よほど批判がましい人をのぞいては、そういうことはしません。
批判が出ない、というのは、未成熟なアイデアを出しやすくなり、アイデアの斬新度が上がります。
そして、突飛さを歓迎しよう、も、よくなります。突飛でできそうにないアイデアを歓迎するのは難しく、ついつい、微妙な顔をしてしまいますが、それは、相手にネガティブフィードバックをして、だんだん突飛なアイデアを言いにくくさせています。でも、書きものの場合、どんな突飛なアイデアも、対面ではないので、出しやすくなります。回した時に、誰かから笑いが起こるのも、そういうアイデアです。
なお、他の人に便乗してアイデアを出す、というのもやりやすくなります。手元に人のアイデアが材料としてあるので、それを組み合わせたり改善したりすることが、ぐっとしやすくなります。
また、ブレストは、全員のシンキング時間が、20分のうち、「聞いている時間」が「アイデアを考えている時間」を減らします。20分のうち、半分あればいいくらいです。ブレイン・ライティングはほとんどの時間、全員がシンキングに使うため、より知的な能力を注入しやすくなります。
また、アイデアが紙に残るので絞る時に非常にやりやすくなります。
なお、ブレストと比べてデメリットもあります。それは、ブレストの方が発言しやすい人がいることと、最後まで目にすることのない良いアイデアが存在することです。自分の書いたシートは最後まで目にしません。自分なら、それ見ていれば、もっと面白いもの思いつけたのに、というものがあったりします。全員が全員のアイデアをしる機会を犠牲にして、発言の苦手な人からもたくさんのアイデアを引き出している、そういう位置づけになります。
※この作業をしやすく、かつ、絞るプロセスも内包させた会議キットとして、アイデア会議マスター01「ブレイン・ライティング・シート」を設計しました。チームのアイデア会議のファシリテーションにまだ不慣れな方が自信を持ってアイデア出しをリードをすることに貢献できたらば幸いです。