車の両輪。
昔、営業をしていたときに、大きなプロジェクトを指揮していく立場にたつことがありました。プロジェクトを進めていくときに私は営業として「追加金額、納期」の対顧客の全責任者となり、一方で各機能部分のSEを統括するプロジェクトマネージャーが「追加仕様、品質」の対顧客の全責任者となり、この2人が車の両輪のように連携しながら大規模なプロジェクトの推進してゆきました。
顧客は窓口が分散することを嫌いましたが、どうしても大量に情報の流れるポジションにある人が、性質の異なるものも一緒くたに受信すると、処理速度が落ちるため、プロジェクト遂行上必要となりこの体制をとりました。究極的には顧客に予算内で期限内で最高の品質のものを納めるために。このときに「AとBは、車の両輪である」という考え方を学びました。
よくビジネスプランをプレゼンする人、聞いて評価する人の会話に次のようなものがあります。
聞き手「そのプランの中の商品のAとB、どちらに絞るの?両方やれば、虻蜂取らずに終わるよ」
プレゼンター「両方やります。Aだけ、Bだけでは、事業展開上十分ではないので」
新規事業は、先のブログで述べたように「一転突破・全面展開」スタイルのほうがいいという考え方があります。上記の聞き手の言葉はその考えが背景にあると解釈できます。一方で、プレゼンターの言葉は、車の両輪のようにAとBの両方が回ってこそその事業を前に進めることができる、という解釈ができます。(もちろんこれ以外にも「異なる段階の夢を同時に進行したい」という人もあるとおもいます。)
AとBが車の両輪である、というのはある種、「バランス」という表現にも近いものがあるともいます。Aだけに動力の8割がたを注いでしまえば、Aの推進力はすごいけれど、全体としてはあまりうまく前進できないでしょう。ある意味、このバランスが必要な状況では最大化するべき目的関数はA単独でも、B単独でもなく、(A+B)/2なのだと思います。一転突破するべきポイントは、AでもなくBでもなく、Cであると。(C=(A+B)/2)
このCが、A,Bに比べて既存の価値観では理解しにくい場合には評価者が「AでもBでもなく、どっちつかずだ!」と評価してしまうことがたまにあるように感じます。『事業の勝敗は市場が決める』という言葉がありますが、その通りで、評価者のつけた事業の良し悪しはあくまでも参考値です。既存の価値観で理解しにくいビジネスは既存の評価者によって好ましくない影響をうける可能性がある、ということも十分に心に留めながら事業創造活動のサポートをしてゆきたいとおもいます。
一点突破。車の両輪。決して相反する概念ではなく統合的に判断する必要がある概念だと思います。