ブレストの実際(1)なぜ質より量なのか。
ブレストのルールは4つあります。本格的なブレストをするとなぜルールがそうなっているのかが、分かる瞬間があります。そのほかの文献で言及されていることも含めて、4回シリーズでご紹介します。
質より量
ブレストでは、”質”は二の次、とにかく”量”を目指します。少し違うのも新しいアイデア(引用:考具)です。ほとんど同じだから出すのをやめよう、と思ったときには、ブレストでは迷わず出しましょう。なにせ量をたくさん出さないといけないわけなので、こじ付けでもいいからとにかく出す。
なぜか質より量か、といえば、たくさんアイデアをだすといいアイデアも出てくる。人間の創造性にはそうした特性があるようです。
実際に十分にメンバーと時間があるときに、ブレストを観察をすると次のようなことが起きます。

チームから生まれてくるアイデアを「斬新度」と「実現性」の二軸でみてみると、はじめは、1の領域(あまり斬新でもなく、実現性もそこそこアイデア)です。チームによっては早くここを抜けていきます。ただ、あまり時間がないとか、メンバーが常に批会する場ではこの1の領域でおわってしまうこともあります。そうしたときには「チームでアイデア出ししてもあまりいいのなんかでない」と感じるでしょう。
そして、もう少しアイデア出しをしていくと、次に2の領域(斬新さはともかく、実現性は結構高いアイデア)に差し掛かります。批判者のいる会議では、その批判を検討の材料にして、問題解決会議に近い様相で、実現度の高いものをだしていったり、前例があるので、比較的実行できそうだというアイデアが出されてきます。妥当なアイデア、もっともらしいアイデア、そんなものが場をしめていきます。ブレストなどをあまり経験したことのない企業の社内チームでアイデア出しをするとこの辺を行うことで会議が終了になります。そして「アイデア出しといってもあまり新しいことはそう簡単に出るもんじゃない。まあ、そんなとこか。」と感じるでしょう。
さらに、アイデア出しを続けていくと、3の領域(斬新度は高く、実現度はあまりない。いわゆる、面白いけどそれどうやってやるの、というアイデア)にうつります。もっともらしいアイデアが出尽くすと人は安心して未来的なアイデアを出し始めます。特に若い人や、いろいろとアイデアを考えている人などが。”いや~、われながらばかばかしいんだけどさぁ”といいながらアイデアが出始めます。そうなってくるとほかの人も結構安心して、じゃあさじゃあさ、という感じに出していけます。前半とはムードがちょっと代わります。なかには、”結構そのきりくち、いいね!”というものがでたりして。
アイデアメーション
スウェーデン式アイデアブックというセンスあふれる創造テーマの本があります。ここに、アイデアメーションという考え方が出てきます。
アイデア出しや発案の時、はじめに出てくるアイデアは多くの人も思いつくアイデアです。これはアイデアというよりは、インフォメーション、つまり情報、です。これをスウェーデン式アイデアブックでは、アイデアメーション(アイデア&インフォメーションの造語)とよんでいます。ある課題をみらたら多くの人が同じようなアイデアを思いつく、これは、人間の創造性の特性のようです。

頭脳が生み出すアイデアをところてんのようなものだとしたら、はじめのところてんには色がない、透明なところてんです。どんどん透明な部分を出し切って、透明な部分(アイデアメーション)を終わらせよう。透明な部分を出し切ると、そのうちにその人独自の色がついたところてんが出てきます。独創、ともいえるかもしれません。これは、上記の”2や3の領域”に相当します。はじめにばかばかしくも、思いつく当たり前のアイデアを、どんどんだしてしまうことは、意外と重要なのです。
以上、なぜ質より量なのか、ということについて個人とチームの創造活動特性からご紹介しました。こうした難しいことは理屈好きの人にはいいと思いますが、さし当たって「アイデア、沢山だそうよ。よし、じゃあ、品質は問わないので、あと30個出してみよう!」といった台詞のほうが、実践では格段に有用ではありますが。